コラム ― デジタル遺品

故人のスマホの写真を取り出すには?
解約・初期化の前に知る公式手順

公開 2026.10.12 / 読了 約10分 / 文:メモリアム編集部

木の机の上に置かれた、画面が白いスマートフォン

遺影に使う一枚を探そうとして、故人のスマートフォンが開けないことに気づく。そんなご相談をよくいただきます。
先にお伝えしたいのは、ロックが解除できなくても、写真がクラウドに残っていれば取り出せる場合があるということです。そしてもうひとつ、手順を間違えると、その写真を取り戻せなくなることがあります。
この記事では、写真を失わないために先にやってはいけないことと、iPhone・Androidそれぞれの公式の手続きを、順を追って整理します。

手続きや仕様は、Apple・Google・各携帯電話会社の公式情報と、国民生活センターの公表資料をもとにまとめています(2026年10月時点)。OSのバージョンや機種によって画面や条件が変わることがあります。法律上の判断が必要な場合は、弁護士にご相談ください。

写真を失わないために、先にやってはいけないこと

手続きに追われていると、つい先に済ませてしまいがちなことがあります。次の4つは、写真を取り出し終えるまで待ってください。

携帯電話の解約は、クラウドとメールを確認してから

携帯電話会社が提供しているクラウドやメールは、解約と同時に、あるいは短い期間のうちに削除されるものがあります。たとえばドコモの「データ保管BOX」は、解約の手続き後すぐに削除されます。詳しくは後半で説明します。

アカウントの削除申請は、写真を取り出したあとで

AppleのiCloud利用規約では、Appleは死亡を証明する書類を受け取った時点でアカウントを終了し、中身を削除できるとされています。Appleへのアカウント削除の申請や、Googleへのアカウント閉鎖の申請は、写真を取り出し終えてから行いましょう。

端末の初期化(リセット)はしない

初期化すると、端末の中のデータはすべて消えます。「中古で売る前に」「家族が使うために」と急いで初期化してしまうと、端末にしかなかった写真は戻りません。

パスコードを当てずっぽうで何度も試さない

iPhoneは、間違えるたびに次に入力できるまでの時間が延び、10回以上間違えるとロックされます。さらに、故人が「データを消去」の設定をオンにしていた場合は、10回連続で間違えた時点で端末のデータがすべて消えます。オンにしていたかどうかは、外からはわかりません。

故人の写真はどこにある?保存場所の見分け方

写真を取り出す方法は、写真が「どこに」保存されているかでまったく変わります。ロック解除は、その手段のひとつにすぎません。

スマートフォンを手に持ち、画面を確かめている手元
写真は本体だけでなく、クラウドに保存されていることもあります。
保存場所取り出すための主な手段
端末の中だけパスコードで端末を開く
iCloud写真・iCloudバックアップ(iPhone)Appleの「故人アカウント管理連絡先」などの公式手続き
Googleフォト生前に設定された「アカウント無効化管理ツール」、またはGoogleへの請求
携帯電話会社のクラウド解約する前に保存する
家族のスマホ・共有アルバム・SNS家族や知人に声をかけて集める

家族や知人の手元にある写真も探す

故人と一緒に写った写真や、故人から送られてきた写真は、家族や友人のスマートフォン、共有アルバム、LINEのアルバムなどに残っていることがあります。端末が開けないときほど、まずこちらを集めてみてください。思っていた以上の枚数が見つかることがあります。

パスコードがわかる場合

ご家族がパスコードを知っている場合は、端末を開いて、パソコンや別のスマートフォン、外付けの記録媒体などに写真を移します。取り出した写真は、一か所だけでなく、二か所以上に保存しておきましょう。パソコンが壊れたり、クラウドの契約が切れたりしても、写真が残るようにするためです。

なお、iPhoneの顔認証(Face ID)は、電源を入れた直後や再起動のあと、48時間以上ロックを解除していないときなどには、パスコードの入力が必要になります。

iPhone:パスコードがわからない場合の公式手続き

まず知っておきたいのは、Appleでも、パスコードでロックされた端末を消去せずに解除することはできない、という点です。そのため、iPhoneの写真は端末からではなく、iCloud側から取り出すことになります。

「故人アカウント管理連絡先」に指定されていた場合

故人アカウント管理連絡先は、本人が生前に設定しておく仕組みです。指定されていた方は、次の2つをそろえて申請します。

  • 故人が設定したときに発行された「アクセスキー」
  • 死亡を証明する書類(日本では、死亡の記載がある戸籍謄本)

申請は、ご自身のiPhoneの「設定」から、またはAppleの「デジタル遺産」のウェブサイトから行えます。アクセスキーをなくした場合、Appleは再発行しないため、次の「指定されていなかった場合」の手続きになります。

取り出せるデータ、取り出せないデータ

承認されると、iCloud写真に加えて、iCloudバックアップに含まれる項目(端末に保存されていた写真やビデオを含む)にアクセスできます。一方、購入した映画や音楽、サブスクリプション、保存されていたパスワードなどにはアクセスできません。

つまり、写真が取り出せるのは、iCloud写真かiCloudバックアップに入っていたものです。端末の中にだけ保存されていた写真を取り出す公式の方法は、確認できませんでした。

アクセスできるのは3年間

データにアクセスできるのは、最初に承認された日から3年間です。その後、故人のアカウントは完全に削除されます。承認されたら、早めにダウンロードしておきましょう。

指定されていなかった場合

故人アカウント管理連絡先が設定されていない場合も、法的な書類を提出して、Appleの審査を受ける手続きがあります。Appleの案内では、日本は裁判所命令の代わりとなる書類や手続きが認められている地域のひとつとされていますが、日本で必要になる具体的な書類や流れは、公開されているページには書かれていません。Appleサポートに直接問い合わせて確認してください。

Android・Googleフォト:パスコードがわからない場合

Androidの端末は、解除できなければ初期化が必要

Googleの公式ヘルプでは、ロックを解除できない場合はスマートフォンのデータを消去する必要がある、と案内されています。消去すると、端末の中の写真もすべて消えます。「Googleアカウントでロックを解除できる」という情報を見かけることがありますが、それはAndroid 4.4以前の古い機種の話です。

一方、Googleフォトにバックアップされていた写真は、端末ではなくGoogleアカウント側に保存されています。端末を初期化してもクラウドの写真は消えませんが、取り出すにはアカウントに入る正規の手段が必要です。

「アカウント無効化管理ツール」が設定されていた場合

故人が生前にこのツールを設定していれば、アカウントが一定期間使われなかったときに、指定された人へ、データをダウンロードするためのリンクがメールで届きます。指定されていたかどうかは、ご家族のメールを確認してみてください。

Googleへの請求は、ハードルが高い

Googleには、故人のアカウントについて「閉鎖」「資金の取得」「データの取得」を請求する窓口があります。ただし、パスワードなどのログイン情報は教えてもらえません。データの取得を申請する場合は、米国の裁判所命令が求められることがあり、日本語の書類には、専門の翻訳者による公証済みの英訳を付ける必要があります。日本の遺族にとっては、簡単な手続きではありません。

2年使われないアカウントは、削除の対象になる

Googleでは、2年以上使われていない個人のアカウントは、データを含めて削除される場合があります。故人のアカウントも例外ではないので、取り出せる見込みがあるなら、早めに動きましょう。

携帯電話の解約で消えるデータ

解約は、どの会社も家族が手続きできます。必要になるのは、主に死亡が確認できる書類(戸籍謄本、住民票の除票、会葬礼状など)と、手続きする方の本人確認書類です。ただし、写真やメールを預けるサービスは、解約とともに消えるものがあります。

会社解約で影響があるもの
ドコモ「データ保管BOX」は解約後すぐに削除。「dフォト」の写真・動画も削除。ドコモメールのクラウドのデータも削除
auauメールは、解約日から31日以内に手続きしないとサーバーのデータが削除。データは自分でバックアップするよう案内
ソフトバンクメールアドレスの持ち運びは解約後31日以内に申し込み。「あんしんデータボックス」は支払い方法によって扱いが異なる
楽天モバイル死亡による解約は郵送で、完了まで約2週間

解約の前に、故人がこうしたサービスを使っていたかどうかを確認し、必要な写真は先に保存しておきましょう。手続きの窓口や必要書類は会社ごとに違うので、下の「参考にした公的情報」から各社の案内をご確認ください。

故人のIDでログインしてもいい?

故人のIDとパスワードがわかっていても、クラウドにそのままログインすることはおすすめしません。

不正アクセス禁止法では、他人のIDやパスワードを使って、インターネット経由でサービスに入る行為を禁じています(サービス側の承諾がある場合などを除きます)。遺族が故人のIDでログインした場合にこの法律がどう適用されるかを示した公的な見解は見つかりませんでしたが、問題になる余地はあります。Appleの規約でも、アカウントは他の人に引き継げないとされています。

写真を取り出すときは、ここまでに紹介した公式の手続きを使うのが安全です。個別の判断が必要な場合は、弁護士にご相談ください。

ロック解除の業者に頼む前に

国民生活センターは、パスワードがわからない故人のスマートフォンやパソコンについて、第三者がロックを解除するのは困難だとしています。携帯電話会社の店舗でも「初期化はできるが、画面ロックの解除はできない」と言われた相談事例が紹介されています。

それでも業者に相談する場合は、見積もりの金額、キャンセル料、解除できなかった場合の費用を、契約の前に書面で確認しておきましょう。トラブルになったときは、消費者ホットライン「188」で、最寄りの消費生活センターなどを案内してもらえます。

取り出した写真を、家族で残すために

机に並べたプリント写真を手に取る手元
取り出した写真は、家族で見返せる形にしておくと安心です。

やっと取り出せた写真も、家族それぞれのスマートフォンに散らばったままだと、また見られなくなっていきます。

散らばった写真を、ひとつにまとめる

故人の端末やクラウドから取り出した写真と、家族や知人が持っていた写真を、一か所に集めましょう。紙の写真やアルバムが残っている場合は、あわせてデータにしておくと、ひとつの場所で見られるようになります。紙の写真の扱いは「遺品の写真・アルバムはどうする?」で詳しく紹介しています。

家族が、いつでも見られる形にする

写真を集めたら、離れて暮らす家族も見られる場所に置いておくと、命日や法要のたびに見返すことができます。ほかの遺品の整理を始める時期については「遺品整理はいつから始める?」にまとめています。

よくある質問

故人のiPhoneのパスコードがわかりません。Appleに頼めば解除してもらえますか?
解除してもらえません。Appleは、パスコードでロックされた端末は消去しない限り解除を手伝えないとしています。写真がiCloud写真やiCloudバックアップに入っていれば、故人アカウント管理連絡先などの手続きで、iCloud側から取り出せる場合があります。
故人アカウント管理連絡先に指定されていれば、何が必要ですか?
故人が設定したときに発行されたアクセスキーと、死亡を証明する書類が必要です。日本では、死亡の記載がある戸籍謄本が求められます。承認されてから3年間、iCloud写真やiCloudバックアップのデータをダウンロードできます。
パスコードを何回か試しても大丈夫ですか?
おすすめしません。iPhoneは間違えるたびに次に入力できるまでの時間が延び、10回以上間違えるとロックされます。故人がデータを消去する設定をオンにしていた場合、10回連続で間違えると端末のデータがすべて消えます。
故人のGoogleフォトの写真は、遺族が請求すればもらえますか?
Googleは審査のうえで判断しますが、パスワードは教えてもらえません。データの取得を申請する場合は、米国の裁判所命令が求められることがあり、日本語の書類には公証済みの英訳が必要です。故人が生前にアカウント無効化管理ツールを設定していれば、指定された人にダウンロード用のリンクが届きます。
携帯電話を先に解約しても大丈夫ですか?
解約の前に、携帯電話会社のクラウドとメールを確認してください。ドコモのデータ保管BOXは解約後すぐに、dフォトも解約で削除されます。auメールは解約日から31日以内に手続きしないと、サーバーのデータが削除されます。
ロック解除の業者に頼んでも問題ありませんか?
国民生活センターは、パスワードがわからない故人のスマホを第三者が解除するのは困難だとしています。業者に相談する場合は、見積もり、キャンセル料、解除できなかった場合の費用を契約前に書面で確認しましょう。困ったときは消費者ホットライン188に相談できます。

まとめ

故人のスマートフォンの写真は、端末が開けなくても、iCloudやGoogleフォトに残っていれば取り出せる可能性があります。まずは、解約・アカウントの削除申請・初期化・パスコードの試しすぎ、の4つを止めてください。そのうえで、写真がどこにあるのかを確かめ、公式の手続きを選びましょう。

メモリアム

取り出した写真を、
家族が見られる場所に

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参考にした公的情報